インプラント治療は、むし歯や歯周病で失ってしまった歯の場所に、身体に馴染みやすいチタン製のインプラント(人工歯根)を埋め込む治療法です。
2015年10月 8日
失った歯を取り戻す方法
歯を失う主な原因は、むし歯と歯周病、そして歯根が割れてしまう歯根破折です。歯が抜けてしまうと隙間ができてしまうために咬み合わせのバランスが崩れ、顎の関節に痛みを感じるようになったり、残った歯に余計な負担がかかるために歯槽骨(歯を支える骨)が溶けてしまうことがあります。
このような状態を解決するには、ブリッジ・入れ歯・インプラントの3つの方法があります。当院では患者さんのご要望を伺いながら、お口の状態に最適な治療法をご提案いたします。
ブリッジとは
被せものの一種で、抜けてしまった両隣の歯を削り、土台を作って橋渡しをするように人工の歯を入れ、欠損部分を補う治療法です。
●ブリッジのメリット
・インプラントなどに比べて安価です
・見た目や機能回復も良好です
・固定式のため、安定して噛む力も回復できます
●ブリッジのデメリット
・ブリッジを固定するために、健康な歯を大きく削る必要があります
・歯が抜けた部分の骨が痩せてしまう場合があります
入れ歯治療
歯が抜けた後、残っている歯の状態や顎の骨の状態によっては、ブリッジやインプラントの治療をすることが難しい場合があります。そのような場合には、着脱式の入れ歯を使用していただくことになります。入れ歯には、部分入れ歯と総入れ歯があります。
●部分入れ歯のメリット
・手術が不要です
・取り外しができるので、ブリッジのように健康な歯を削らずにすみます
●部分入れ歯のデメリット
・不安定なために噛む力が弱くなります
・装着したときに、違和感を感じることがあります
●総入れ歯のメリット
・ブリッジでは適応できない大きな欠損を補うことができます
・比較的簡単に治療が受けられます
●総入れ歯のデメリット
・部分入れ歯よりも安定性を欠きます
・歯ぐき全体で入れ歯を支えるため、噛む力が弱くなります
・噛み心地が悪く、硬い食べ物は咀嚼するのに苦労することがあります
・発音が上手くできなくなることがあります
・バネが目につくため、見た目がよくありません
インプラント
失った歯を取り戻すのに最も適した方法です。歯が抜けた箇所の顎の骨にインプラントを埋め込み、固定した上で人工の歯を被せます。インプラントは骨と結合する性質を持っているチタンでできています。
インプラント治療をすることにより、自然の歯と同じように噛む力や見た目を取りもどすことができます。
●インプラントのメリット
・天然歯と同じような感触で食事をすることができます
・審美的にも、以前の歯と同じように仕上げることができます
・インプラントを埋入することで顎の骨に力が加わり、骨が痩せるのを防ぐことができます
●インプラントのデメリット
・外科的処置が必要です
・強度の糖尿病などがある場合、治療できないことがあります
・自費治療となるので費用が高くなります
こんな方にお勧めです
・健康な歯を削るのに抵抗がある方
・入れ歯やブリッジの不具合・不快感から解放されたい方
・天然歯と同じように白い歯、きれいな歯並びにしたい方
インプラント治療の流れ
【STEP 1】カウンセリング
患者さん一人ひとりの症状に応じた治療方法を診断し、ご提案します。
【STEP 2】術前検査
歯型、レントゲン写真、CT撮影、口腔内写真、歯周組織検査、顎運動測定などを行います。
【STEP 3】一次手術
麻酔をしてから顎の骨を削り、インプラントを埋入していったん閉じます。
【STEP 4】二次手術
歯肉を切開し、被せものを取りつけるアバットメントを取りつけます。
【STEP 5】仮歯装着
歯肉の治癒を待って仮歯を作り、実際に使っていただきながら形態や装着の具合などを確認します。
【STEP 6】最終的な歯(被せもの)の装着
仮歯でチェックした情報を基にして最終的な歯の型を取り、歯並びや歯の色を確認して製作します。ここで作られた本歯を装着して治療を終わります。
※インプラントの治療が終わるまでには平均して4〜9カ月かかります。
インプラントのメインテナンス
口腔内の衛生状態がよくないとインプラントの脱落などの原因につながります。そのため、適切なブラッシングや定期検診をすることが大切です。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
小児歯科
小児歯科とは、乳歯が生えはじめてから永久歯に生え替わるまでの大変重要な時期に対応する診療科目です。むし歯治療が主になりますが、当院では予防を重視し、お子さんの予防処置に力を入れています。
当院ではお子さんの治療には保護者の方の協力が大切と考えております。治療をはじめるに当たっては、はじめにお子さんのお口の状態をよく理解できるように十分説明をして、しっかり納得いただいてから治療を開始いたします。
乳歯のむし歯予防について
乳歯は大人の歯に比べると柔らかく、むし歯になりやすい性質があります。そして、一旦むし歯になってしまうと進行しやすいので、予防することが大切です。むし歯予防をするには、毎日のブラッシングだけでは不十分な場合が多いので、定期的な予防処置を受けることをお勧めします。
乳歯を守るためのポイント
●乳歯が生えてきたら小児歯科の受診をしましょう
乳歯は生後6カ月頃から生えはじめます。すでにこの時点からむし歯になる可能性があるので、乳歯が生えたら小児歯科を受診してむし歯予防をすることをお勧めします。
●甘いものの摂りすぎに気をつけましょう
砂糖が多く含まれている食べ物はむし歯のもとです。キャラメルやチョコレートなどの糖分は口の中に留まりやすいので、できるだけ口にしないようにしましょう。甘いお菓子はシュガーレスやキシリトール配合のお菓子がお勧めです。
●時間を決めておやつを食べましょう
1日に何度も食べ物を口にすると、お口の中の状態が酸性に傾いたままになるので、むし歯になりやすくなります。おやつをだらだらと与えるのを止めて、おやつタイムを決めて与えるようにしましょう。
●食後には必ずブラッシングしましょう
食事の後やおやつを食べた後は、必ずブラッシングをする習慣をつけましょう。やむを得ずブラッシングができないときは、うがいをして口の中をすすぎましょう。
むし歯の予防処置について
ブラッシング指導
小さなお子さんは、自分で歯をみがくことが十分にできません。当院では衛生士がお子さんにも分かりやすいよう、丁寧に説明をしながらブラッシング指導をいたします。
シーラント
乳歯や、生えたばかりの永久歯には深くて複雑な溝があります。食べカスなどが詰まりやすい上にブラッシングが届きにくいのでむし歯になりやすくなります。そこで、樹脂を使って溝を埋め、歯の表面を滑らかにするのがシーラントです。この処置をすることで、食べカスの詰まりが少なくなり、むし歯になりにくくなります。
フッ素塗布
フッ素には、細菌の繁殖を抑えたり歯が再石灰化するのを促す効果があります。これを歯の表面に直接塗ることで歯質を強化し、むし歯を予防します。定期的に塗布することをお勧めします。
再生療法
再生療法とは、歯周病で失われてしまった骨や歯周組織の再生を図る治療法です。
当院では、エムドゲイン法、遠心分離機(メディフュージ)を使用したCGF治療など、最新の治療法を導入して治療に当たっております。
エムドゲイン法
エムドゲインとは、スウェーデンのビオラ社で開発された薬剤で、歯周組織の再生に用いられます。主成分はブタの歯胚から取り出されたエナメル蛋白で、これは歯が作られる過程で分泌されるタンパク質です。
歯周外科手術の際にエムドゲインを使うことにより、歯の発生過程に似た環境を再現し、新しい歯が生えてきたときと同様に強固な付着機能を持った歯周組織が再生するのを促します。
エムドゲイン手術の流れ
【STEP 1】
抜歯をするときのように麻酔をかけて、治療する部分の歯肉を切開して剥離します。
【STEP 2】
歯垢や歯石が付着した歯根の表面をきれいに拭ってからエムドゲインを塗布します。
【STEP 3】
最後に切開した部分をきちんと縫合します。手術にかかる時間は約1時間で、手術後30分ほど休んでから帰宅していただきます。抜歯をするのは手術日から2〜6週間後になります。
手術後の注意点
①手術をした傷はすぐに治りますが、治療後6週間は手術部分を傷めないために歯ブラシやデンタルフロスで磨かないでください。また、手術部分を指で触らないようにしてください。
②歯や歯ぐきに負担がかかるような硬い食べ物は食べないようにしてください。治療後6週間は禁煙を心がけるようお勧めします。
③手術後の感染を防ぐために、治療後3〜6週間は消毒薬で口の中をよく洗浄してください。抗生物質が処方された場合は、医師の指示にしたがって服用してください。
CGF治療
CGF治療とは、患者さんご自身の血液を遠心分離機にかけてできたゲル状のフィブリンと濃厚血小板を入れて歯周組織の再生を促す、最新の治療法です。
CGF治療の利点
患者さんご自身の血液から抽出されるので、添加物をいっさい使用しない完全自己血液由来の血小板や成長因子をふくんだフィブリンゲルを用います。完全自己血液なので、感染症に対する安心感も高まります。
また、CGFは損傷された組織の再生・治癒に対して作用する「成長因子」をたくさんふくむ血小板をさらに濃縮したものです。これを用いることにより術後の痛みが少なくなり、傷の治りも早くなります。
CGF治療の流れ
【STEP 1】血液の採取
手術前に患者さんの血液を採取し、CGFを作ります。
【STEP 2】CGFを作る
遠心分離機(メディフュージ)を使ってCGFを作成します。遠心分離機にかけることにより赤血球が分離されるとともに、成長因子や血小板を多くふくむCGFが形成されます。
【STEP 3】骨充填剤(人工骨)と混ぜて治療する
骨を増やしたい箇所にCGFと骨充填剤を混ぜて使用することで、傷の治りを早くします。
MTAセメントを使った治療
MTAセメントとは、歯根に穴が開いた場合や歯にひびが入ったときなどに、穴やひびを埋めるために使われる素材です。Ph12という強アルカリの性質があるので、ほとんどの菌を殺減することができます。
当院では、MTAセメントが持つ「組織を刺激することにより、硬組織を形成する」作用に着目し、再生療法に応用しております。
自家歯牙移植について
歯を失ったときに、お口の中に不必要な歯(親知らずや歯列から逸脱した転位歯など)がある場合に、その歯を抜いて失った歯の部位に移植する治療法です。
自分の身体の一部である歯を使うため、拒絶反応や感染の心配がないことがメリットです。
自家歯牙移植をした歯の残存率は10年ほどとされています。当院では積極的にこの治療に取り組んでおります。
口腔外科
口腔外科とは、むし歯や入れ歯の治療以外の口腔の治療や、歯肉の中に埋まってしまっている親知らずを抜くなど、顎の骨やその周辺に起こる病気に対応する診療科目です。
当院では旭川医大から口腔外科専門の医師による治療を行い、難しい親知らずなどの処置も行っております(月に2回~3回)。
親知らずの抜歯
親知らずは、根が横に生えていたり、歯肉の中に歯が埋まっていたりするために抜歯が困難になります。しばしば一般歯科医では手に負えず、大学病院などに送られる場合があります。
当院では、骨の中に埋もれている埋伏智歯などの難症例にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
親知らずを抜いた方がいい理由
●むし歯になりやすい
親知らずが横向きや斜めを向いて生えると、手前の歯との間に隙間ができてしまい、食べカスなどが詰まりやすくなります。また、そういう箇所はブラッシングがしにくいため、むし歯になるリスクが高まります。
●口臭の原因になる
ブラッシングしにくいため、親知らずの周りには汚れが残りやすくなっています。汚れは口臭の原因となるだけでなく、歯ぐきを腫れさせて膿を出し、さらに強い口臭を生み出すことがあります。
●歯列を乱す
親知らずは正しい向きで生えないことが多いので、手前の歯を押して歯並びを悪くしてしまうことがあります。歯列矯正を行う前には、親知らずの抜歯をお勧めします。
歯根端切除
歯の根っこ(歯根)の先端部分に膿が溜まった袋ができて歯ぐきが腫れたり痛んだりする場合、根管治療を行うことで治癒に向かいます。しかし、根管治療をしても膿が完全に取り切れていなかったり、予後が良くない場合には、歯根の手術をすることで抜歯をせずにすみます。これを歯根端切除術といいます。
この手術では、歯根の先に溜まっている膿の袋を歯ぐきの方から切開して取り除き、感染した歯根の先の一部分を切断します。
歯根端切除をした方がいい場合
①根管治療をしても改善の見込みがない場合
歯根の先に膿が溜まっている場合、まずは根の中を消毒する歯根管治療を行います。しかし、この治療を繰り返し行っても膿が止まらなかったり、歯ぐきの腫れが引かない場合には歯根端切除を行います。
②歯根の形が複雑な場合
歯根の先に膿が溜まっているけれども、根の形が複雑なために根の先まで届かない場合があります。このような場合には根管治療では根管内の細菌を完全に取り除くことができないため、歯根端切除を行います。
③根の中にある土台をはずすと歯が割れる可能性がある場合
神経を抜いた歯は、歯が割れるのを防ぐために金属の土台を入れていることがあります。根管治療をするときにはこの土台を取り除く必要がありますが、削り取る際に歯が割れてしまう可能性があります。そのようなときには根管治療をせずに歯根端切除を行います。
④歯にひびが入っている場合
根管治療を何度も行うと、歯根部分にひびが入ってしまうことがあります。その隙間から細菌に感染すると、歯ぐきが腫れたり膿の袋ができたりします。このような場合には、歯ぐきを切開してひびの入った部分をセメントで埋め、歯根端切除を行います。
⑤歯に穴が開いている場合
金属の土台が入っている場合、歯と土台との硬さが異なるために歯に穴が開いてしまうことがあります。その穴から細菌が感染すると歯ぐきが腫れてしまいます。このような場合にも、歯ぐきを切開して穴が開いている部分をセメントで埋め、歯根端切除を行うと腫れが引いてきます。
歯根嚢胞摘出術
歯根の先端部分にできた膿の袋のようなものを歯根嚢胞といいます。この嚢胞は顎の骨にできるので、炎症が強くなって嚢胞が大きくなると歯の周りの顎の骨を大きく溶かすことがあります。それを防ぐため嚢胞付近の歯ぐきを切開して顎の骨を削り、歯根嚢胞を取り除くのが歯根嚢胞摘出術です。
この治療は歯根端切除と同時に行われることが多い治療です。
口内炎治療
口内炎とは、お口の中の粘膜に起きる炎症の総称です。いろいろな種類がありますが、もっとも一般的なのは「アフタ性口内炎」です。表面が白っぽくなって窪みがあり、周りが赤い円形または楕円形の潰瘍で痛みをともない、一度に1個から数個できます。
口内炎の治療には軟膏を塗ることが多いのですが、当院ではレーザーを使った治療を行っております。レーザーは光ですが、これを照射すると組織の表面で熱に変わって治療していきます。口内炎の治療の場合、レーザーを照射すると瞬時に痛みが引いていきます。照射した部分は焦げたような感じになり、かさぶたのような膜が作られます。
また、レーザーには殺菌・消毒作用があるので、一般に治るまでに10日〜2週間かかるといわれる口内炎は、数日で治すことができます。
スマイルデンチャー(ノンクラスプデンチャー)について
部分入れ歯は金属のフックを残っている歯に引っかけて安定させています。しかし、このフックが気になるという患者さんが多くいらっしゃいます。スマイルデンチャーは、金属のフックを使わず素材が持つ弾性で安定させることができる入れ歯です。
スマイルデンチャーとは
スマイルデンチャーは、部分入れ歯の金属を歯や歯ぐきと同じ色にすることで、口を開けたり笑ったりしたときに金属が見えないようにする入れ歯です。
スマイルデンチャーのメリットとデメリット
【メリット】
・入れ歯だと気づかれにくい......フックが歯や歯ぐきの色に合わせて作られているため、入れ歯が入っていることを気づかれません。また、フック自体が歯の根元に添って作られるので、段差も目立ちません。
・薄くできるので違和感が少ない......スマイルデンチャーの素材は強度にすぐれ、また柔軟性があるので薄く作ることが可能です。そのため、装着したときに違和感を感じることが少ないという特徴があります。
【デメリット】
・素材がすり減ってゆるくなる......プラスチック樹脂素材で歯を支えるため、取り外しを重ねているうちにフック部分がすり減ってゆるくなることがあります。
・自費治療になる......スマイルデンチャーは保険診療の適応ではありません。
ミラクルデンチャーについて
ミラクルデンチャーは「奇跡の入れ歯」とも呼ばれるほどの、まったく新しい考え方から作られた入れ歯です。
ミラクルデンチャーの特徴
・金属のフックを使わないので見た目が自然
・入れ歯と歯ぐきを一体化させて固定するため、硬いものが噛める
・小さく作ることが可能なので、従来の入れ歯に比べて違和感が少ない
・入れ歯が動かないので、歯との隙間に物が詰まりにくい
・食感や味覚が自然に味わえる
・出し入れをする方向が斜めか横方向になるので、残っている歯にあまり力がかからず、歯にとってやさしい入れ歯
ただし、初めて入れ歯を入れる人の場合、慣れるまでに多少時間がかかることがあります。
また調整が非常に難しいので、取り扱い医院でなければできないというデメリットがあります。
その他の入れ歯について
保険の入れ歯
主な素材はプラスチックで、破損が生じても修理しやすいというメリットがあります。床の素材もプラスチックになるため、一定の厚みが必要になります。そのため違和感が大きくなることがあります。
金属床の入れ歯
入れ歯の粘膜に接する部分を金属で作ったものです。薄く作ることができるため違和感が少なく、発音しやすいという特徴があります。また熱伝導性が高いので、食べ物の温度が伝わりやすく、食べ物を美味しく味わうことができます。その反面、調整が難しく壊れたときに修理がしにくい、口を大きく開けると金属部分が目立つことがあるというデメリットもあります。
インプラントデンチャー
最近人気が高まってきている入れ歯です。歯の抜けた部分の顎の骨にチタン製の土台を埋め込み、そこに入れ歯を装着します。安定性が高く、インプラントで固定しているために物が噛みやすい、ずれにくいというメリットがあります。アタッチメントには磁石タイプのものがあり、取り外しが容易なのでお手入れも簡単です。
矯正治療
矯正治療とは、装置を使って歯を根元から動かし、歯並びや咬み合わせを美しく適正に改善する治療です。
歯列矯正の治療というと、ギラギラ光る金属の装置をつけるのが嫌だという方が少なくありません。しかし、最近は装着しても目立たないものが多くなっています。当院では患者さんのご要望を容れつつ、最適な装置で治療を行っております。
小児の矯正治療について
お子さんの矯正治療を行う目的は、一生自分の歯で噛むことができるきれいな歯並びになるようお手伝いすることです。そのためには、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期から口腔内管理を始め、場合によってはこの時期から治療を開始する必要があります。
1期治療と2期治療
乳歯から永久歯に生え替わる途中の時期を「混合歯列期」といい、この時期に行う治療を「1期治療」と呼びます。また、永久歯が生えそろってから行う最終的な矯正治療を「2期治療」といいます。
顎の大きさと歯の大きさのバランスが崩れていたり、上顎と下顎の位置関係がずれているために歯並びや咬み合わせの異常が起こります。これらを悪化させないようにし、2期治療を効果的に行うために1期治療を行います。
親知らず(智歯)について
歯列矯正を行う場合、親知らずが萌出する際に前の歯を押し出してしまう場合があるため、親知らずの歯胚(歯になる前の段階)を除去することがあります。口腔外科の処置ですが、当院では矯正治療の一環としてこれを行っております。
成人の矯正治療について
矯正治療はお子さんが対象と思われがちですが、大人になってからでも可能です。近年は若い女性を中心に、ご高齢の方まで矯正治療を受けるケースが増加しております。
当院では目立たない矯正装置や短期間で治療を終える治療など、患者さんのニーズにあった治療をご提供しております。
矯正装置の種類
歯並びを治すための装置にはいろいろな種類があります。
基本的な矯正装置
●メタルブラケット
金属の装置で変色することがなく、丈夫なのが特徴です。
目立ちにくい装置
●セラミックブラケット
天然の歯にいちばん近い色をしたセラミックでできているので、装着しても目立たないのが特徴です。
床矯正について
床矯正は入れ歯のような形をした矯正装置で、取り外しが簡単にできるのが特徴です。ワイヤーを使った矯正装置と比べると、取り外しができるのでブラッシングしやすく、むし歯になるリスクが少ないというのがメリットです。
【床矯正のメリット】
・原則として抜歯をしません
・痛みが少なくてすみます
・取り外しが可能です
・比較的、費用が安価ですみます
【床矯正のデメリット】
・取り外しができるので使わないと効果がありません。本人が積極的でなければ装置を使わなくなる可能性があります
・しゃべりづらくなります
・比較的、違和感があります
2〜3本からの矯正が可能な部分矯正
患者さんのご要望や歯並びの状態によっては、前歯に部分的に矯正装置をつける部分矯正をすることが可能です。前歯は奥歯に比べて歯の移動距離が少ないので動かしやすく、咬み合わせの調整にそれほど期間を要しないのが特徴です。また全顎矯正に比べて痛みが少なく、費用も少なくすむというメリットもあります。
こんな方にお勧めします
・前歯の歯並びだけが気になる方
・仕事が忙しく治療期間が取れない方。また治療費用を抑えたい方
・海外転勤や結婚式などに間に合わせたい方
・過去に行った矯正の後戻りにお悩みの方
歯並びの種類
叢生(歯の凸凹、八重歯)
歯の大きさと顎の大きさの調和が取れていない症状です。見た目が良くないだけでなく、歯みがきがしにくいのでむし歯や歯周病の原因となります。また、すべての歯が咬み合わせに参加しないので、咀嚼効率がよくありません。
上顎前突(出っ歯)
上顎の前歯が下顎の前歯よりも突出している症状です。前歯が突出しているために口を閉じるのが困難で、いつも口が開いている、あるいは意識しなければ口を閉じられないという症状があります。
下顎前突(受け口)
正常な咬み合わせでは、上顎の前歯が下顎の前歯に少しかぶさるようになっています。下顎前突は、下顎の前歯が上顎の前歯よりも突出している状態です。咀嚼機能が低いだけでなく、受け口特有の顔貌や発音障害などの問題があります。
開咬
奥歯だけが咬み合って、前歯が咬み合わない症状です。発音が不鮮明になり、とくにタ行やサ行のような破裂音を正確に発音できないため、息が漏れたような発音に聞こえることがあります。また前歯で噛み切ることができないため、咀嚼効率がよくありません。
過蓋咬合
上の前歯が下の前歯に深く噛み合わさっている症状です。咬み合わせが深すぎる場合、顎の関節に余計な負担がかかるために、顎関節症になるリスクが高まります。
空隙歯列(すきっ歯)
顎の大きさに比べて歯が小さかったり、歯の数が少なかったりすることが原因で起きる症状です。歯の隙間に食べ物が挟まったり、前歯の隙間が目立つために審美的な問題があります。
短期間の矯正について
普通の矯正は長期間かかるというイメージがありますが、当院では治療期間が1年から長くても2年で治療を終えられる短期間の矯正治療を行っております。
永久歯の根は、第二大臼歯を除いて11歳くらいまでに完成します。当院で行う短期間の矯正はこの時期を待って行うものです。(根が完成する前に矯正による負荷を掛けると、根の成長が止まってしまう場合があるためです)
マルチループを使った矯正
当院ではマルチループという装置を使って非抜歯矯正を行っております。この装置は、従来の装置に比べて3倍の長さの針金を曲げ込んで作られており、従来よりもしなやかで、弱い力を長期間かけることができます。さらに、治療の際に歯の動きを3次元的に移動させることが可能になっています。
従来の装置は歯を1本ずつ横に動かしてから上下に動かす必要があることから時間がかかっていましたが、この装置ではすべての歯を同時に最短距離で移動させることができます。これにより治療期間が大幅に短縮され、治療期間が短い場合には1年、通常ならば2年で治療を終えることが可能になっています。
全身のバランスを取っているのは顎なのです
何度も歯の治療をしたのに良くならない、いくつも病院を回ったけれども原因が分からない不調がある。そのようなときには咬み合わせが関係している可能性があります。
人間は二足歩行をしていますが、実は二本の脚で立つことはバランスを取るのが非常に難しいのです。
顎は、筋肉で頭蓋にぶら下がっているだけの1kgほどのものですが、これがバランサーの役目を果たして人間は立っていられます。逆に言うと、顎が正常な位置から少しでもずれてしまうと、身体全体が歪みいろいろなところに影響が現れてきます。
顎のずれ、咬み合わせのずれで生じるお悩み
顎がずれているために正しい状態で歯が咬み合っていないと、一部の筋肉だけに強い負荷がかかってしまいます。この状態が慢性的に続くと、肩こりや頭痛、腰痛など、さまざまな症状が現れてきます。
主な症状
・肩こり
・腰痛
・頭痛
・首筋の凝り
・背中の痛み
・目の痛み・手足の冷えや痺れ
・便秘
・下痢
・生理不順
・無気力
・うつなどの不定愁訴
当院が行っている咬み合わせ治療
【矯正治療】
矯正というとお子さんがするものというイメージがありますが、咬み合わせ治療としての矯正は大人の方に対しても有効です。装置をつけると人目が気になるという方がいらっしゃいますが、最近は目立ちにくい矯正装置も多くあります。当院では正しい診断をした上で、最新機器を使った最適な矯正治療をご提案いたします。
【補綴治療】
歯ぎしりや食いしばりその他の原因で、歯が欠損したために咬み合わせが悪くなっていることがあります。そういう場合には、失った歯を補うための補綴治療を行います。従来からよく行われている入れ歯治療、ブリッジ治療の他、インプラント治療も行っております。
【スプリント療法】
スプリントとは、顎関節症の治療に使われる透明なマウスピース状の装置です。患者さんの歯型に合わせてスプリントを作り、これを寝ている間(症状によっては日中も)に付けていただくことによって、就寝中にかかっている過度な緊張を和らげていきます。患者さんの負担も少なく、歯ぎしりや食いしばりの予防も期待できます。
歯ぎしりと食いしばりについて
歯ぎしりは、誰もが眠っている間に無意識にしているものです(音が出ない歯ぎしりもあるのです)。また、食いしばりは起きているときについついしてしまうものです。しかし、無意識でしているものだから気にならないからといって、そのまま放置してしまうのは危険です。
これらは「プラキシズム(口腔内悪習慣)」と呼ばれ、お口の健康にとっては決していいものではありません。それというのも、プラキシズムによって歯に過度な負担がかかると、異常にすり減ったり、割れたりする他、ときには周囲の骨を溶かしてしまうこともあるからです。
また、プラキシズムは歯周病を悪化させるリスクを高めるともいわれています。歯ぎしりや食いしばりがあると顎の位置もずれやすくなるので、顎関節症や睡眠時無呼吸症候群の原因にもなります。
プラキシズムの影響を知るためにも、まずは受診してみてはいかがでしょうか。
歯周病とは歯ぐきや歯槽骨を破壊する病気です
日本人の成人の約80%が歯周病にかかっているといわれます。当院では重度の歯周病にも対応しております。また歯周病の再発防止にも力を入れ、患者さんの歯と歯ぐきをお守りしています。
歯周病は歯周ポケットにたまった歯周病菌によって、歯ぐきの組織や歯を支える骨(歯槽骨)が破壊されていく病気です。治療せずに放っておくと、やがて歯がぐらついてきて最悪の場合には抜け落ちてしまいます。
また、歯周病はお口だけにとどまらず、全身疾患とも深く関わっていることが知られています。歯周病菌がお口の血管から侵入して全身を駆け巡り、糖尿病や心臓病になるリスクを高めます。しかし歯周病は、その病気自体の性質から完治させることが非常に難しいとされます。
歯周病は自覚症状が少ないのが特徴です
歯周病にかかっても痛みなどを感じることが少ないために、病気の進行を見逃してしまうことが少なくありません。初期の症状としては、歯肉の赤み・歯ぐきの腫れ・歯ぐきからの出血があります。
病気が進行するにつれて、症状も変化します。中期になると、口臭や歯肉の痒みが出始め唾液がネバついてきます。さらに後期になると歯が動くようになり、歯肉が異常に下がって歯が抜け落ちてしまうこともあります。
歯周病の治療
歯周病はなんといっても予防することが肝心です。そのためにはまず、ご家庭で行う歯みがき法から見直しましょう。
プラークコントロール
基本となるのはプラークコントロールです。プラークコントロールとは、歯周病の原因である歯垢を取って歯周病菌の増殖を抑えるのを目的とした予防・治療法です。当院では、正しい歯ブラシの使い方をご指導する他、歯間ブラシ、デンタルフロスなどの利用法も分かりやすくお伝えしております。
スケーリング&ルートプレーニング
歯みがきを正しくしても、歯周ポケットの奥にたまっている歯垢までは取り除くことができません。そこで専用の器具を使って歯垢や歯石を除去し、歯の根をツルツルに仕上げる処置がスケーリング&ルートプレーニングです。
この処置をすることによって炎症が収まっていき、歯周ポケットの深さも浅くなるので、病気の進行を抑えることができます。
歯周病内科
正しい歯みがきをして歯垢を落とし、それでも取れなかったものや歯石をスケーリング&ルートプレーニングで除去しても、実は歯周病菌が全滅するわけではありません。
歯周病内科は、これまでとは違ったアプローチの仕方で歯周病を治療する方法で、歯周病菌の種類に応じて飲み薬を処方し、その効き目によって菌の種類と量をコントロールする方法です。
この方法で治療すると、1週間前後で腫れや出血、膿などが収まってきます。また感染の原因となる菌を根本的に退治するため、再発しにくいというメリットがあります。
再生療法
歯周病によって失われる歯槽骨は、再生する能力を持っています。再生療法は歯の機能と形態を回復させるために、特殊な薬剤などを使って歯槽骨を増やす方法です。この再生療法にはGTR法とエムドゲインという方法があります。
GTR法(組織再生誘導法)
歯肉を切開してプラークを除去した後、歯肉の上皮の下にメンブレンと呼ばれる人工膜を入れて歯周組織の再生を図る方法です。病気の進行を抑えるだけでなく、溶けてしまった歯槽骨を再生させる新しい術式として注目されています。
エムドゲイン法
GTR法では人工膜を使いますが、エムドゲイン法ではその代わりにエムドゲイン・ゲルという薬剤を使います。この薬剤を歯槽骨が欠損した部分に入れて歯周組織の再生を促します。
歯科一般(むし歯治療)
歯科医といえば、まず思い浮かぶのは「むし歯」です。そしてむし歯は痛くなってから治すものと考えられがちです。しかし、一度むし歯になった歯は元にはもどりません。当院ではむし歯の早期発見と早期治療に努め、できるだけ削らない・抜かない治療を行っております。
むし歯になる原因とは
むし歯とは、歯にこびりついた歯垢(プラーク)の中に潜む病原菌が繁殖し、酸性の毒素を出して歯を侵していく病気です。
むし歯を起こす原因には次のものがあります。
①間違ったブラッシング法......磨き残しができてしまい、歯垢がついたままになっています。
②甘いもの(糖質)の摂取......細菌は糖質を原料にして歯垢を作ります。
③体質、病気、薬の副作用......これらの要因により歯質が弱くなることがあります。
④食生活の乱れ......生活習慣の乱れはむし歯になるリスクを高めます。
むし歯の進行
CO
歯の表面が白く濁って見えるが、まだ穴は開いていない。表層下脱灰を起こしている状態で、正しいケアをすれば再生する可能性がある。
C1
歯の表層であるエナメル質に穴が開いた状態。まだ痛みを感じることはないので、気がつかないことが多い。早めの治療であれば痛みもほとんどない。
C2
表面に開いた穴が広がり黒くなって見える。むし歯が象牙質まで達しているので、冷たいものがしみたり、ものを噛むと痛んだりする。むし歯の部分を削って詰めものをする。
C3
むし歯が神経にまで達した状態。場合によって激しい痛みが出る。このまま放置しておくと歯を抜かなければならないリスクが高まる。
C4
神経が死んでしまった状態。そのため強い痛みを感じることはないが、ものを噛んだときに痛みや違和感を感じる。また膿がたまって顔が腫れたりすることがある。
むし歯の再発防止
むし歯の治療後は、定期的なメインテナンスを行うことで再発を防ぐことができます。また、歯の健康的な状態をいつまでも保つために、当院では定期検診をお勧めしております。
患者さんには定期的にハガキにてご案内をお送りいたします。
痛みの少ない治療
当院では、痛みの少ない治療を行うためにも、できるかぎり歯を削ったり抜いたりせず、天然の歯を可能なかぎり残すことを大切に考えております。
たとえばむし歯の治療においても、初期のむし歯であれば削らずに再石灰化をうながして治療を終えることもあります。また、むし歯が進行してしまうと、どうしても歯を削る範囲が広がり患者さんの負担も大きくなるので、できるだけ健康な歯を維持するためにも、定期的なメインテナンスをお勧めしています。
痛くない麻酔を心がけています
お子さんだけでなく、大人の患者さんでも歯科治療は痛いから苦手、という方が少なくありません。痛いだけではなく、治療に対する不快感や恐怖感も苦手意識のもとになっているようです。
そこで当院では、細心の注意を払った麻酔を行うことで痛みを最小限に抑える工夫をしております。
電動麻酔器
麻酔薬を注入するときに余計な圧力がかかってしまうと、痛みや不快感を感じることがあります。当院では箇所によっては電動麻酔器を用いて、麻酔薬を注入する圧力とスピードを自動的にコントロールしながら注射を打っております。この麻酔器により、痛みや不快感を最小限に抑えることが可能になっています。
また、注射針にはもっとも細い針を使用しています。これもまた針を刺すときの痛みを和らげるのに役立っています。
薬液の温度管理
たとえば、手を洗うときにいきなり冷たい水を使うと「冷たい!」と敏感に感じるものです。冬場などはとくに冷たさが痛みに感じることもあります。このように温度差が大きいものに接するとき、人間は違和感や痛みを感じるものなのです。
これは麻酔薬も同じで、お口の中の温度よりも冷たい液体が歯肉に注入されると鋭い刺激となってしまいます。そこで、当院では麻酔薬の温度を人肌程度に温めてから注射をするようにしております。こうすることによって、麻酔注射をしたときの痛みが大きく和らげられます。
充実の設備・装置
当院では患者さんに快適で安心できる治療を行うことができるよう、さまざまな設備・装置を充実させております。
診察室
常に清潔な状態で治療するために、衛生面に配慮しております。また患者さんのご要望によりオープン診察室とセパレート診察室をご用意しています。
・オープン診察室......明るく広々とした空間で、寛いだ気分で治療をお受けいただけます。
・セパレート診察室......治療ユニットを個別に仕切っているので、プライバシーを考慮した治療をすることができます。
チャイルドルーム
当院ではお子さんをお連れの患者さんを大歓迎しております。院内にはチャイルドルームを設け、患者さんの治療中もお子さんが遊びながら待っていられるようにしております。
院内技工室
医院内に技工室があり、熟練の技工士が常勤しています。患者さんのご要望をダイレクトに受け止め、精度の高い詰めものや義歯を製作いたします。また、義歯の修理などは場合のよっては当日に完了できます。
レーザー治療器
CO2レーザー治療器を使用しております。痛みが出ないようにコントロールして使うことができるため、痛みの少ない治療にも用いております。
滅菌装置
治療に使用する器具は、すべて清潔な状態を保っております。患者さんごとに一つずつ滅菌、消毒して院内感染を防いでおります。
顎機能診断装置(キャディアックス)
ウィーン大学名誉教授のProf. R. Slavicekの理論に基づいて開発された、顎機能咬合診断診療プログラムです。キャディアックス下顎運動測定装置によって得られたデータをコンピュータで解析し、咬合器の設定や補綴物の製作までを行うシステムです。
知ってもらうということの大切さ
お口の中の状態は自分で見ることができません。当院では初診時に詳しい資料を作り、患者さんにお見せしながら分かりやすく治療方針を説明いたします。
※患者さんがご希望の場合と自費治療の場合になります。
お口の中の調子が悪い。そんなときにも実際にはどこがどのような原因でトラブルになっているのかは分からないものです。
当院では、まず患者さんご自身に病気の状態を知っていただくということを大切に考えております。レントゲン撮影をするとともに、必要に応じて口腔内の写真を撮ったりお口の模型を作るなどして患者さん一人ひとりについての詳しい資料をお作りします。
そして2回目の診療のときに、資料をもとに30分から1時間ほどかけてコンサルティングを行います。この中で患者さんご自身の「病状」を知っていただき、どのような治療が必要かを理解していただきます。
ときにはむし歯の原因が歯周病にあった、あるいは不正咬合による咬み合わせの異常にあったといったことが明らかになり、患者さんの同意を得たうえでむし歯の治療に合わせ、歯周病や咬み合わせの治療も行うようになることもあります。
信頼関係を築いての治療
患者さんにご自分の病状を知っていただいた上で治療をすることは、病気に対する理解を深めていただくだけでなく、治療に対する理解も深まるという利点があります。これにより歯科医師との信頼関係が生まれ、治療がスムーズに進むようになります。
矯正治療のコンサルテーション
矯正治療の場合は患者さんがお子さんのケースが多いので、親御さんを交えてのコンサルテーションには特に力を入れております。
矯正治療には歯科医師による治療だけでなく、患者さんご自身の協力が欠かせません。せっかく装置を装着しても、勝手に外してしまったりしては治療になりません。そこでコンサルテーションでは、まず矯正治療とはどんなものかを知ってもらうことから説明をはじめます。
さらに、矯正で使用する装置にはどのようなものがあるかを一通りお見せして、その後、治療期間や患者さんに具体的に守っていただく事柄や、装置をつけた場合には歯みがきが大切であるといった細かな注意事項もお伝えします。
セカンドオピニオン
先週、こういう患者さんが来院されました。他の歯科医院で治療中で、「痛みが全然取れないので診て欲しい」「今朝も治療に行ったが、何ともない、と言われた」お口の中を拝見すると、神経を治療した痕があり、その治療後の痛みの後遺症で今、歯を触ると痛みが増すと診断し、洗浄だけして投薬しました。2~3日続けて診させていただいて少しづつ痛みが和らいできたようです。患者さんが痛いというのですから何らかの原因があるはずです。真摯になって患者さんの声を聞いてあげる重要性を改めて感じた症例でした。
包括的治療とは
美しく健康的なお口を実現するために、当院では歯周病治療・咬み合わせ治療・矯正治療・審美治療等の総合的な知識、経験を取り入れ、全顎的治療を行っております。
「歯が痛いからむし歯を治してもらおう」
「歯ぐきが腫れてきたから歯周病のケアをしてもらおう」
「歯並びが気になるから矯正歯科に行こう」
歯科医の治療をこのような理由から受けるものだと考えていませんか?しかし一つに特化した治療をしただけでは、本当に美しく健康なお口にすることにはなりません。
当院では口腔内全体の健康状態を診るだけでなく、咬み合わせや顎関節などをトータルに考え、患者さん一人ひとりのお口にもっとも適した治療を行っております。これが当院の考える基本的な治療であり、包括的治療ともいいます。
コンサルテーションを大切にしています
当院が大切にしているのは、患者さん一人ひとりが持つお口の悩みに耳を傾けることです。そのため、本格的な治療を行う前に行っているコンサルテーションは、非常に重要な意味を持っています。
「どうされましたか?」
この一言から、診療がはじまります。
患者さんはそれぞれに、歯が痛む、歯ぐきが腫れているといった主訴をお持ちです。もちろん痛みや腫れなど急性の症状がある場合は、その部位を診察したうえで原因を取り除くための応急処置をします。しかしその前に、当院では患者さんの同意を得たうえでレントゲン写真の撮影や、必要に応じて口腔内の模型を作らせていただき、それを基により正確な診断をいたします。
たとえばコンサルテーションで詳しく患者さんのお話をうかがっていると、
「何度治療を繰り返しても同じところの具合が悪くなる」
「歯の具合が悪くなってきたのと同期したように身体全体の調子が悪くなった」
などといった症状の背後にあるものを感じることがあります。
そこでレントゲンを撮り、模型を作って患者さんのお口の状態を調べてみると、歯並びが乱れていることにより咬み合わせが悪くなっていることが原因であったり、歯ぎしりや食いしばりといった習癖が原因だったりという「隠れた原因」が姿をあらわすのです。
顎と顎関節との不調和が"歯科的ストレス"に
歯科的ストレスというと、連想されるのはむし歯の痛みなどお口の中で生じる痛みでしょうか。しかし、ときには激しい偏頭痛や背中、首の痛み、耳の痛み、慢性的な疲労感、イライラ感、腰や膝の痛みといった、ともすると歯とは関係のないような症状が歯科的ストレスとしてあらわれることがあります。
その場合、多くは顎と顎関節の不調和から生じたものと考えられます。しかし、一般の歯科医院ではこうした歯科的ストレスについての知見がなく、こうした症状を訴える患者さんは内科や整形外科、ときには精神科にまわされてしまうことになります。
当院では、患者さんとのコンサルテーションでこのような症状の訴えをお聞きした場合、まずは顎と顎関節との関係を診査いたします。その結果、顎と顎関節がわずかにずれている顎偏位症であると分かることが少なくありません。
顎偏位症とは
下顎の位置が正常な位置からわずかに偏っている状態を顎偏位症といいます。偏る度合いは10㎛のものから数ミリにまでおよぶ場合もあります。
顎偏位症の治療
顎の位置を適正な位置に補正することが基本です。多くの場合、マウスピースを使ったスプリント療法によって咬合位を改善することにより、症状の緩和が見られます。ただし、顎の適正な位置は全身の重心の影響を受けて変わっていくため、補正するのは簡単ではありません。完治するまでには数年かかることもあります。
ショルダーバッグを掛けられなかった女性
ある患者さんの場合は、左側の歯ばかり悪くなるため、これまで抜歯をしたうえでブリッジにする治療を受けてきたことを話してくれました。しかしブリッジをすると、その歯がまた悪くなるというのです。そして話の中で、自分はショルダーバッグを持つ時、片方の肩にしか掛けることができないのだと話されました。
こうしたお話しから原因をさぐっていくと、どうやら上下の顎のバランスが崩れていて、そのために顎関節症となって左側の歯に悪影響をおよぼしているらしいことが分かってきました。また、ショルダーバッグが掛けられないのも、顎のバランスの崩れによる全身症状のひとつだということも明らかになりました。
このような場合には、歯列矯正をして全顎的にバランスの調整をすることが望ましいのですが、この方の場合はご高齢ということもあって矯正はしたくないというご要望でした。そこで次善の対策として「スプリント」という樹脂製のマウスピースを、暇なときや眠るときにつけていただくようにしました。
それにより歯の調子も肩のバランスも随分よくなりました。
こうした事例も、コンサルテーションを行うことによって得られた適切な治療だといえるでしょう。
どんな治療も、歯周病対策が基本です
当院の包括的治療では、以上のように咬み合わせを重視した診査・診断を行っております。咬み合わせの状態を知るために、より精度の高い診査を行うときには、キャディアックス・システム(あごの動きを計測するための機器)を用いてミリ単位で顎変異の量を計測しています。
また当院では、咬み合わせとともに歯周病対策にも力を入れています。どんなに精度の高い咬み合わせの治療をしても、歯周病が進行して歯がグラグラになってしまったのでは意味がありません。
治療をはじめる前に、ブラッシングなどのお口の手入れをご指導してプラークコントロールに努め、歯周病の予防にご協力いただいています。
●キャディアックス・システム(Cadiax System)とは
ウィーン大学名誉教授のProf. R. Slavicek氏の理論に基づいて開発された、顎機能咬合診断診療プログラムです。キャディアックス下顎運動測定装置によって得られたデータをコンピュータで解析し、患者さん一人ひとりの骨格形態を分析して適切な咬合器を設定し、最終補綴物を製作するのに使います。
治療に必要な期間は、およそ1年半です
包括的治療では、咬み合わせ治療をふくむ全顎的な治療を行っていくので、治療が終了するまでにはおよそ1年半ほどの期間がかかります。お口の中の問題をすべて解決するには、それだけの時間が必要になるのです。
もちろん、患者さんには治療の内容を丁寧にご説明し、納得していただいたうえで治療をさせていただきます。患者さんがかならずしも全顎的な治療を望まず、機会を改めて治療をご希望する場合には、決して治療を強制するものではありません。