顎と顎関節との不調和が"歯科的ストレス"に

歯科的ストレス歯科的ストレスというと、連想されるのはむし歯の痛みなどお口の中で生じる痛みでしょうか。しかし、ときには激しい偏頭痛や背中、首の痛み、耳の痛み、慢性的な疲労感、イライラ感、腰や膝の痛みといった、ともすると歯とは関係のないような症状が歯科的ストレスとしてあらわれることがあります。

その場合、多くは顎と顎関節の不調和から生じたものと考えられます。しかし、一般の歯科医院ではこうした歯科的ストレスについての知見がなく、こうした症状を訴える患者さんは内科や整形外科、ときには精神科にまわされてしまうことになります。

当院では、患者さんとのコンサルテーションでこのような症状の訴えをお聞きした場合、まずは顎と顎関節との関係を診査いたします。その結果、顎と顎関節がわずかにずれている顎偏位症であると分かることが少なくありません。

顎偏位症とは
下顎の位置が正常な位置からわずかに偏っている状態を顎偏位症といいます。偏る度合いは10㎛のものから数ミリにまでおよぶ場合もあります。

顎偏位症の治療
顎の位置を適正な位置に補正することが基本です。多くの場合、マウスピースを使ったスプリント療法によって咬合位を改善することにより、症状の緩和が見られます。ただし、顎の適正な位置は全身の重心の影響を受けて変わっていくため、補正するのは簡単ではありません。完治するまでには数年かかることもあります。

ショルダーバッグを掛けられなかった女性
ある患者さんの場合は、左側の歯ばかり悪くなるため、これまで抜歯をしたうえでブリッジにする治療を受けてきたことを話してくれました。しかしブリッジをすると、その歯がまた悪くなるというのです。そして話の中で、自分はショルダーバッグを持つ時、片方の肩にしか掛けることができないのだと話されました。

こうしたお話しから原因をさぐっていくと、どうやら上下の顎のバランスが崩れていて、そのために顎関節症となって左側の歯に悪影響をおよぼしているらしいことが分かってきました。また、ショルダーバッグが掛けられないのも、顎のバランスの崩れによる全身症状のひとつだということも明らかになりました。

このような場合には、歯列矯正をして全顎的にバランスの調整をすることが望ましいのですが、この方の場合はご高齢ということもあって矯正はしたくないというご要望でした。そこで次善の対策として「スプリント」という樹脂製のマウスピースを、暇なときや眠るときにつけていただくようにしました。

それにより歯の調子も肩のバランスも随分よくなりました。

こうした事例も、コンサルテーションを行うことによって得られた適切な治療だといえるでしょう。

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